|
●● 100本映画 "I'm gonna make something of myself. And depend on me!"2月のブラックヒストリー月間の時に出会った作品。 なんでも、『Fresh Dressed / 日本未公開 (2015)』や『Burn Motherfucker, Burn! / 日本未公開 (2017)』などの面白いドキュメンタリー映画を作るサシャ・ジェンキンスの父、ホーラス・B・ジェンキンスが、80年代にほぼ黒人クルーで製作したニューオリンズを舞台にした作品らしい。そう知って、これは絶対に観たい!となりました。前にも書きましたが、私に合いそうな作品は、観る前から「これは何としてでも観たい!」と心が高鳴ります。良い予感しか感じなかった。そしてその予感を遥かに上回る作品でした! ニューオリンズ近郊、ケイン・リバーという川が流れる小さな街。そこは元々、クレオールのマリー・テレセ・コインコインという元奴隷の女性が、クロード・トーマス・ピエール・メトワイヤーと出会い、自由黒人となり、広大な土地を所有していた場所である。そこに大学を終えて戻ってきたのがピーター(リチャード・ロメイン)で、家族や友人らに盛大に迎えられる。大学ではアメリカンフットボール選手として活躍し、プロからもドラフトされたが、本人は詩人を目指していた。立ち寄ったメルローズ・プランテーションでバイトをしていたマリア(トミー・マイリック)と知り合い、意気投合する。2人は恋に落ちるが、ピーターはメトワイヤーの子孫でクレオール。マリアの母は「黒人なのに奴隷を保持していたメトワイヤーは許せないし、クレオールとの恋愛はご法度だ」と、頑なに拒んでしまう。マリア自身もニューオリンズのザビエル大学への進学を目指しており、2人は板挟みになってしまう…… 少し長くなってしまいましたが、要するにニューオリンズを舞台にしたロミジュリです! しかも史実を織り交ぜながら、このような面白い作品にしてしまっている。始まりと終わりが同じ場所、というかバス停留所なのも上手いなーと。最後の最後までどうなるか分からないのも面白いし、とても爽快! セリフも凄く良い。ちょうどこの作品を観た頃は、NFLコンバイン(ドラフトに向けた体力・身体テスト)の最中でして、ニューヨーク・ジェッツにドラフトされたピーターが「肉体を物色されているようで嫌だ」と言っていて、私もコンバインについては何となくそんな感じをしていたので、頷くしかなかった。 マリアも、古い価値観の母からの自立を目指して街を出ようとしていた。マリアには兄がいるが、これまた古い価値観の持ち主。そんな環境で育ったが、いや、育ったゆえに、自分のやりたいことを見つけ、マリアの価値観を大事にしてくれる、そして新しい扉を開いてくれるピーターに惹かれていく。 何より、ケイン・リバー周辺の自然や街の空気感がとても印象的で、まるでその土地の記憶そのものを映しているようだった。 てっきりジェンキンス監督が、このケイン・リバー周辺出身なのかと思いきや…… 息子サシャの話では、この頃にはサシャの母と離婚しており、当時付き合っていた女性がケイン・リバー周辺出身で、この話を教えてもらったという。そして、友人関係にあったリチャード・プライヤーが何度か本作を観て気に入り、劇場公開を目指してワーナーに持ちかけたりもしたが実現せず、そのまま公開されないまま放置されていた。やがてホーレス・B・ジェンキンス監督は心臓発作により急逝。葬式ではパリ時代に仲良くなったメルヴィン・ヴァン・ピーブルズが弔辞を読んだという。他にも、親子でヒップホップの話になり、アフリカ・バンバータに出会った時の話をして、『Zulu Funk』というタイトルの映画を作りたいと語ったのが最後だったという。 史実とファンタジー、時代といにしえ、想像と現実、文化と自然…… それらがゆるやかに重なり合い、ケイン・リバーという土地の記憶と共に物語が流れていく。そんな豊かな魅力を持った作品である。 (1919本目) (Reviewed >> 3/1/26) |
●● トリビア 『Fresh Dressed』や『Burn Motherfucker, Burn!』などのドキュメンタリー映画を手掛けているサシャ・ジェンキスの父ホーラス・B・ジェンキンスの作品。公開前に心臓発作で亡くなり、公開はお蔵入り。2013年にフィルムが発見され、アカデミー・フィルム・アーカイブにより4Kにリマスターされた。 |
|
●● インフォサイト https://www.imdb.com/title/tt0318346/https://en.wikipedia.org/wiki/Cane_River_(film) Not available from Allcinema |
|